シャネル銀座。入店待ちの列には若者の姿も見られた。
撮影:土屋咲花
「貯金するインセンティブがなくなって」
取材に応じた大手証券会社に務めるコウスケさん(仮名、29歳)は、イタリアのボッテガ・ヴェネタのオレンジ色のニットを身にまとい、腕にはタグ・ホイヤーの腕時計を身につけながらそう語る。
実は今、コウスケさんのようにラグジュアリーブランドを購入する「若い世代」が増えている。
大丸松坂屋百貨店の広報担当者は、
「少し前まではお得意様(外商顧客)は60代以上が多かったが、Webでの申し込み受付などの取り組みの結果、30~40代の富裕層が急増している。神戸で実施したルイ・ヴィトンのポップアップストアも、富裕層に限らず若い層も多く来店いただいた」
と変化を口にする。
2022年度の売り上げが開業以来過去最高を記録したと発表したGINZA SIXは、好調要因の一つにラグジュアリーブランドの牽引を挙げた。特に、20〜40代の男性の客単価が伸長したという。
過去最高売り上げを報告するGINZA SIXのリリース文。男性20代〜40代が伸長したと報告している。
撮影:Business Insider Japan
ラグジュアリーブランドは財布が10万円台程度から、バッグは30万円以上がざらだ。さらに、生産コストの高騰や円安の影響で値上げも相次いでいる。品質の高さはあるにしても、高価なブランドをなぜ買うのか。過去1〜2年以内に購入した20代に聞くと、高価な購入品とは裏腹に、消費に対する堅実な考え方が見えてきた。
貯金するインセンティブがない
(写真はイメージです)
simpletun / Shutterstock.com
冒頭の大手証券会社で働くコウスケさんは、文京区の賃貸に一人暮らし。取材時に着ていたボッテガ・ヴェネタは、アウトレットで約8万円で購入した。タグ・ホイヤーは約80万円。半年前には、エルメスのブレスレット「シェーヌダンクル」をパリから取り寄せたという。
「資産運用的な観点も少しはありますが、基本は好きだから買っています」
昔からファッションが好きで、高校時代は古着屋でお気に入りのブランドを探した。ただ、年に約100万円を投じるようになったのは2年前からだ。
「それまでは仕事しかしていなかったんです。それこそ土日も働いていたので、服もあまり買っていなかった。保守的な家庭で育った影響もあってか、月に10万円ほどは貯蓄に回すようにしていました」
きっかけは、2020年に発売されたベストセラー『人新世の「資本論」』(著:斎藤幸平)を読んだことだという。
「この本を読んで、環境問題の深刻さを身近に感じました。本当にいつこの社会システムが崩れてもおかしくないんだと。金融の中心地ともいえる証券会社に勤めていると、その危うさが見えるんです」
この読書体験を機に、考えが変わった。
「大企業に勤めている自分がお金に困るような状況になってしまったら、他の同年代もそうなるはずです。そうしたら社会運動が起こって、政府が何とかすると思っています。だから、今貯金をして自分で備えることにあまり意味がないなと。未来のことよりも、今が幸せかどうかを大事にするようになりました」
お金を使いたい先の一つがファッションだった。ただ、欲しいと感じるものを手当たり次第に買っているわけではない。
ボーナスを投じたタグ・ホイヤーは、両親が結婚した時に贈り合ったブランド。ボッテガ・ヴェネタが好きなのは、高校入学時に父親からもらった財布がボッテガだったからだ。それも元々、父親自身が使っていたものを修理して贈ってくれたのだという。
ボッテガ・ヴェネタのニットと父親から贈られた財布(左)、タグ・ホイヤーの時計(右)。
コウスケさん提供
「その財布は今でも使っています。値段こそ気にしなくなりましたが、どうでもいいものは買わないです」
現在の消費スタイルへの変化で、幸福度は上がったと実感している。
「推し」が持つグッチに憧れて
yu_photo / Shutterstock.com
看護師のアカリさん(仮名、25歳)がハイブランド購入を考えるようになったのは、社会人2年目の2021年ごろからだ。横浜市内にある寮に暮らし、天引きされる家賃を引いた自由に使えるお金は月に20〜22万円ほど。最近は夜勤のない部署に異動したため、収入は少し減った。
元々ブランド品への憧れはあった。ファッション感度の高い友人からの情報や、SNSや広告を通じてブランドのイメージが変わったことが、購入を後押しした。
「韓国の女優IU(アイユー)が好きなんですが、彼女がグッチのモデルになったんです。季節ごとにさまざまなビジュアルが公開されて、『いいな』と思うようになりました。
アカリさんは横浜や新宿の繁華街で見かける全身ロゴのファッションに身を包むグループをみて、自分には似合わない印象を持っていたという。
「どこかやんちゃなイメージがあったんですけど……韓国のアイドルが可愛く持っている姿に憧れました。今買っておけば、この先長く使えると思ったのもあります」
ラグジュアリーブランドは若者に人気の歌手やモデルを次々にアンバサダーに起用している。韓国のガールズグループ「BLACKPINK」のLISAは2020年、セリーヌ初のグローバルアンバサダーになった。シャネルのアンバサダーは、同じくBLACKPINKのジェニーや小松菜奈らが務めている。
アカリさんがそれまで使っていたのはコーチやマーク ジェイコブスなど、より手の届きやすい価格帯のブランド。友人とアウトレットに行って購入した約25万円のグッチのバッグは、
「ボーナス消えるじゃん、みたいな買い物でした」
お気に入りだが、日常的に使うわけではない。
「グッチだとすぐ分かるデザインなので、初めての人に会う時は持つのを控え、仲の良い友人と会う時や一人で出かける時だけ使っています。人からの評価を気にする性格なので、『ブランド好きに見られるかな』とか、『なんのお金で買ったんだろう?』と思われるかも……と考えてしまって。持ちたいバッグを持てば良いんでしょうけどね」
2022年始めには、財布をロエベに買い替えた。
「これは芸能人というより、インスタグラムの投稿に影響されました。インスタでおしゃれな人たちが持っているブランドがロエベやセリーヌで、素敵だなと思って。元々使っていた財布が古くなったのと、仕事のご褒美の意味もあって、インスタで情報収集して5万円くらいのフラグメントケースを購入しました」
一人で店舗に入るのは気が引けて、ネットで購入したという。
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