近年ではイヤフォンジャックのないスマートフォンが多く販売されている。トレンドのっとれば、TWS(True Wireless Stereo)イヤフォンと合わせて快適に使いたいところだが、ここはあえて有線イヤフォンが利用できるイヤフォンジャックを備えたスマートフォンを見ていこう。
5年でハイエンドスマホの多くがイヤフォンジャックが廃止
イヤフォンジャックが廃止されたスマートフォンを見ると、比較的高価な機種が多い。例として2017年と2021年に発売されたハイエンドスマホでのイヤフォンジャック搭載率をグラフに示す。
ハイエンドスマートフォンの定義としては、iPhone(SEシリーズ除く)と、AndroidスマートフォンではSnapdragon 800番台採用、またはそれに準じたスペックを持つスマートフォンとして掲載している。バリエーションモデルについてはカウントしていない。
グラフを見比べると、2017年では7割近くのスマートフォンでイヤフォンジャックが搭載されていたのに対し、2021年ではわずか3割にとどまる。iPhoneだけではなく、Androidスマートフォンでもイヤフォンジャック廃止となった機種が多いことが分かる。
イヤフォンジャックを備えるスマホはニッチなのか
ニッチかといわれると、そうでもない。SIMロックフリー端末がひしめく4万円以下の価格帯では、イヤフォンジャックが減りつつあるハイエンド市場に比べ、イヤフォンジャックを備えるスマートフォンが多い。
これに関しては、ターゲット層の違いと考えられる。安価な機種では搭載しているプロセッサによってはTWSのコーデックに対応しきれないこともある。あわせて、この価格帯のスマートフォンを利用するユーザーの多くが、有線イヤフォンを利用することが多いと想定して備えていると考えられる。
一方、ハイエンド市場に限れば、イヤフォンジャック搭載スマートフォンはニッチなものになりつつある。これについてはメーカー各社がAppleのエコシステムに追従したという見方ができる。自社のスマートフォンとTWSイヤフォンを組み合わせることで、今までのイヤフォンではできなかったリスニング体験が可能になるというものだ。
SamsungやXiaomiなどのAndroidスマートフォンを製造するメーカーを見ていると、メーカー各社のエコシステムに組み込まれる形でTWSイヤフォンが販売されている。Appleを見て分かる通り、AirPodsはオーディオ機器というよりもスマートフォンの周辺機器というポジションに近い商品だ。
そのため、他社の製品との組み合わせでは性能や機能を最大限に発揮することはできない。それ以外の理由としては、5G対応などでパーツ数の増加に伴う基板面積の増加やアンテナ設計、バッテリーの大容量化やステレオスピーカー、冷却機構などの構成部品が増加している点も影響していると考えられる。
また、ゲーミングスマホという少々ニッチなジャンルのスマートフォンではイヤフォンジャック搭載機種が多い。ゲームもジャンルによってはワイヤレスイヤフォンだと音声の遅延が気になるものも多くあり、USBアダプターでは相性問題もあることからイヤフォンジャックを求める声が特に多い。ゲームに特化した構成のスマートフォンにはイヤフォンジャックは必須だ。
ゲーミングスマホ以外では「ゲーミング機能」の一環としてイヤフォンジャックを採用する例もある。
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イヤフォンジャックを備える注目の機種は?
ニッチとなったハイエンドスマートフォンにおけるイヤフォンジャック。あえて選ぶ理由として挙げられるのは、TWSイヤフォンではできない高音質や長時間再生、動画やゲームなどでの音声遅延を抑えられることだ。
日本で販売されるスマートフォンでイヤフォンジャックのイメージが強いのは、ソニーのXperiaだろう。
Xperiaではオーディオ機能も強化されている。アップコンバート機能であるDSEE Ultimateは、各種ストリーミングサービスでも上乗せで適用でき、圧縮されることの多いストリーミングサービスでも非常に高音質なリスニングを体験できる。
あまり触れられてはいないが、Xperia 1 II以降のソニーのハイエンドスマートフォンでは、ストリーミング配信サービスにおけるビットパーフェクト再生に対応している。これはAndroid搭載の一部音楽プレイヤーなどに採用されているものだ。近年登場したAmazon Music HDといったハイレゾ音源のストリーミング配信でも、ダウンコンバートされることなく高音質で再生できる。
TWSユーザーだけにとどまらず、有線のイヤフォンでも高音質で楽しみたいという「こだわりのあるユーザー」に根ざした商品だ。
一方、日本でも販売されて話題となったASUS が販売するゲーミングスマホ「ROG Phone 5」も高音質再生に重きを置いたスマートフォンだ、
ROG Phone 5では本体のDACにESS製のES9280Proを搭載。このESS製DACは、音楽プレイヤーなどで採用されており、スマートフォンに採用される例はかなり少数だ。ROG Phone 5の特徴として、専用DACならではのきめ細かな音が体験でき、普通のスマートフォンとは一線を画すクオリティーのサウンドを楽しむことができる。もちろんハイレゾ音源にもしっかり対応している。
ESS製DACはハードウェア実装なので、イヤフォンジャックを通して出る音には全て適用される。この点はゲームプレイでも効果を発揮し、シューティングゲームでは敵の足音や銃声を確実に拾うことができる。また、音量が大きめに出せる点も利点だ。スマートフォンでは音量が取りにくいヘッドフォンなどでも安定して使うことができる。
イヤフォンジャックの有無だけでもスマホを選ぶ理由になる
先述のグラフに示した通り、日本で販売されるスマートフォンでも多くの機種でイヤフォンジャックが非搭載となっている。一方でTWSイヤフォンも売れ筋のAirPods(第2世代)は定価1万6800円(税込み)と決して安いものではない。近年では3000円以下の安価な商品も出てはいるが、機能面や音質では売れ筋機種に差をつけられる状態だ。
その上でケーブルがないという特性上、耳から落ちて紛失したりするリスクもある。筆者自身カバンの中で充電ケースが開いていて「片耳だけ無い!」とカバンをひっくり返して探し回ったこともある。
そのような面では、有線イヤフォンは首にかけたり、無造作にかばんに突っ込んだりしても本体を紛失する可能性はTWSイヤフォンより少ない。極端な話だが、有線イヤフォンであれば100円ショップでも購入できる。入手性の良さと価格の安さも魅力といえる。
よくイヤフォンを断線させたり紛失したりするユーザーにとっては、TWSイヤフォンは紛失や故障が怖い、充電し忘れて使えないという声もあるくらいだ。また、LightningやUSB Type-Cからイヤフォンジャック変換アダプターを使う場合は、イヤフォンを利用しながらスマートフォンの充電ができない点など惜しい点も多い。
スマートフォンにイヤフォンジャックが搭載されていれば、忘れがちになる変換アダプターが無くてもお気に入りの音楽や動画コンテンツに浸ることができる。市場にある多種多様なイヤフォンやヘッドフォンをスマートフォンでも手軽に使用できる。音声の遅延やイヤフォンのバッテリーなどを気にすることなくゲームやSNSに没頭できる。
これらは以前なら当たり前だったが、イヤフォンジャックがニッチとなりつつある今では、これらは大きな利点だ。そういう意味では、イヤフォンジャックのあるスマートフォンをあえて選ぶ意味は大きい。長く使っていく相棒となる端末だ。じっくり考えて選ぶのもいいだろう。
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