2020年05月04日06時49分
1984年ロサンゼルス五輪で初めて行われた女子マラソン。8月5日、残り選手も少なくなって、コロシアムへ帰って来たガブリエラ・アンデルセン(スイス)の姿に、大観衆は息をのんだ。
足を引きずり、上体を大きく揺らし、今にも倒れそうに一歩、半歩と進む。やがてごう音のような声援が起こった。
「ゴー! ゴー!」
意識もうろうとしながら係員の制止を拒み、39歳はゴールへ倒れ込んだ。
大会前から暑さは課題だった。レース終盤の気温は30度近かった。今よりずっと低いが、スタートは午前8時。コースにはシャワーが設置され、12人の医師が配置された。
翌日、銀メダルのグレテ・ワイツ(ノルウェー)は「止めるべきだった」と批判したが、アンデルセン自身は笑顔で「最後は覚えていないわ。でも私は大丈夫」などと語り、注目を浴びて戸惑った。国際オリンピック委員会(IOC)も、脱水症状を覚知しつつ危険はないとした現場の判断を支持した。
そこには、女子にマラソンは無理だと言われたくないとの思いがあった。ロスは女子の種目が増えた大会であり、五輪には、28年アムステルダム大会で女子の陸上に当時最長の800メートルが採用され、人見絹枝らが倒れてその後しばらく実施されなかった歴史もある。
ロス五輪の後も選手の身体能力、トレーニング法や水分補給法などが進み、猛暑のマラソンは続いてきたが、地球規模の気温上昇はその上を行き、昨年はじけたように起きた東京五輪のコース変更騒動。女性のスポーツ進出に水を差すことなく、問題を整理して真夏の五輪を論ずる機運が、84年当時はまだなかった。
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May 04, 2020 at 04:49AM
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ロスで初の女子マラソン、ぼやけた議論 アンデルセンの壮絶ゴール―五輪あのとき - 時事通信
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