連載:小倉健一の最新ビジネストレンド
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1967 年に創業した炉窯炭焼ステーキ店「麤皮(あらがわ)」が、イギリスのロンドン中心部に出店をした。サーロインステーキ1枚760ポンド(約14万円)という強気の値段設定に、さすがのロンドンでも衝撃が走っているようだ。この「麤皮」の挑戦は日本企業と農産物の輸出にどのような影響をあたえるのだろうか。
「破格の高さ」はロンドンで受け入れられるのか
サーロインステーキ1枚760ポンド(約14万円)という「麤皮」の強気の値段設定には、イギリスの高級紙「TIME」ですら、戸惑っているようだ。同紙ではこんなレポート(2023年10月25日「英国で最も高価なステーキを食べてみた。760ポンドのサーロインにその価値はあるのか?」)が載っている。「ステーキに切り込みを入れ、フォーク一杯を口に放り込むと、今噛みしめている和牛の塊が20ポンド(=フォーク一口サイズで約3,700円する)の価値があることを考えないようにした」「数日前、メイフェアの地下に、真鍮のベルプレートに書かれた日本語の店名だけがその存在を示すほど目立たない日本食ステーキレストランがオープンした。しかし、値段に控えめなところはない」
「センセーショナルなほど美味しかった。本当においしい。しかし、この値段に見合うか? 以前、この街で最も高価なステーキは、セレブリティを抱き、指をくわえて食べるトルコ人レストラン経営者・ヌスレット・ゴクチェが率いる国際的なレストランチェーン、ヌスル・エットのナイツブリッジ店だった。彼は2021年、金で覆われた1,450ポンドのトマホークステーキを発表し、センセーションを巻き起こした。昨年、彼は価格を引き下げ、金メッキをやめ、トマホークはわずか630ポンドになった」
これまで、日本の店舗がロンドンへ進出するという事例には、たとえば「丸亀製麺」がある。レギュラーのかけうどんが6.95ポンド(約1,300円)、ランチセット(かけうどん、天ぷら2品、コカコーラ飲み放題)は11.45ポンド(約2,100円)だ。
日本と比べると破格の高さだが、ロンドンの情報誌「TIMEOUT」(2023年4月6日)によると、そのコストパフォーマンスは絶賛されている。
「定番の海老の天ぷらは完璧に近く、しかも2.35ポンド(440円)で大きい、嬉しい驚きだった」「何度も言うようだが、チキン餃子は1個1ポンド(187円)以下だ!安くて、早くて、驚くほどヴィーガンフレンドリーな丸亀製麺のうどんは、他のファーストフードチェーンがやらないことをやっている。(ほとんど手をつけることはない)サイドメニューには18ポンド(3,350円)の小皿料理が多いこの世界(イギリス、オックスフォード・ストリート界隈の飲食店)では、これ以上歓迎されることはないだろう。丸亀うどん万歳!」
創業者が語る価格設定の「こだわり」とは
日本人が海外で飲食店を開くとなると、安くて美味しいものを考えてしまうものだが、ステーキ店「麤皮」の値段設定は、そんなもの、どこ吹く風のようだ。創業者であり、「麤皮」を経営する小川光太郎氏は、イギリスのスタンダード紙(2023年10月25日)の取材に対して、以下のように述べている。「肉に関しては、日本でもめったにお目にかかれないような最高の品質をお届けしています。つまり、肉の値段が非常に高いのです。ロンドンだからといって、ただ値段を高くしているわけではありません」
同社プレスリリース(2023年10月24日)によれば、「40ヶ月以上長期肥育した、希少な純血統の未経産但馬牛を使用している」というが、さすがに一口3,700円、一枚食べたら14万円というのは、TIME紙でなくても震えてしまう。
「麤皮」の挑戦は、日本企業に新たな選択肢を与えることになるだろう。ヴィトンやシャネルではないが、海外の高級ブランドが日本の市場を席巻しているように、日本の高級農産物、畜産物が海外への進出が増えそうだ。 【次ページ】世界と戦うための日本の貿易の「在り方」とは
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