CdEaK-JPN(シーディーク・ジェイピーエヌ)は、「クールでエコ&健康的なアイデアを日本から発信」をビジョンとして2022年に起業し、ユニークな製品の開発を行っています。 CdEaK-JPNの名称は、”クール(C)+で(de)+エコ(E)+アンド(a)+健康的なアイデア(K)+日本から(‐JPN)”を組み合わせた造語からきています。
現在、「付けてるだけで向かい風で少し楽に走れる自転車用フェアリング」をマクアケで公開しています。この新製品は、走行中の空気抵抗を軽減し、より快適な自転車ライフを提供する新感覚のプロダクトです。このストーリーでは、製品が完成するまでの軌跡と、新商品の魅力をお伝えします。
【掲載URL】https://www.makuake.com/project/cdeak_jpn/
夢の実現のため起業。ユーザー視点の開発目標
CdEaK-JPNを起業する以前は、某大手産業機器メーカで設計、開発、品質保証部門に所属し、30年以上機械エンジニアおよび組織のマネージャとして業務に従事してきました。 退職後は「社会に有益な製品を自由に開発してみたい」という自分の夢を実現するため、CdEaK-JPNを起業しました。当初、家族は企業への再就職を望んでいたようでしたが、最終的には起業することを承諾してくれました。
自転車用フェアリングの開発は起業当初から決めていました。これは自分の趣味としてサイクリングを長年楽しんでいましたが、向かい風が歳をとるにつれきつくなり、ユーザーとしての視点から空気抵抗を軽減するフェアリングのアイデアを温めていたからです。また、近年健康志向から自転車の需要が広がっており、多くの愛好家が自分の自転車をグレードアップするため、高価なエアロパーツパーツ等を購入する市場であることも開発目標に選定した理由です。
なぜ自転車用フェアリングが必要なのか?
自転車で走行中に向かい風になって、急にペダルが重くなったことはありませんか?自転車を秒速3mの向かい風の中、時速20kmで走行した場合、パワーロスの約90%(*1)は空気抵抗によるものです。この空気抵抗を軽減すると、より快適にサイクリングを楽しんだり、向かい風の中で自転車の通勤通学が少し楽になります。また、電動アシスト自転車でもパワーを削減することで航続距離が延びるメリットがあります。 CdEaK-JPNは、自転車用空気抵抗軽減器具(フェアリング)を開発することで、自転車特有の課題を解決し、みなさんに新しい自転車の楽しさを提供できるよう活動しています。
予定外の特許申請が開発を大きく前進させるきっかけに。
当初、特許の申請は製品を試作後に時機を見て後日出願する予定でしたが、動画サイトで「自転車用フェアリングの製作を目指す」動画が公開されているのを偶然を発見したため、急遽自転車用フェアリングに関する特許出願に取り掛かりました。結局その動画は途中で立ち消えになり、取り越し苦労に終わりましたが、詳細な図面を急ぎ作成したことで製品開発が大きく前進するきっかけとなりました。出願するには先行特許の調査から明細書や斜形図の作成、出願手続が必要となりますが、弁理士事務所に依頼すると高額の費用が必要となるため、INPIT(知財総合支援窓口)のアドバイスを受けながら全て自分で行いました。
一般に使用できるようになった”流体解析”
流体解析とは、水や空気の流れといった流体力学を応用したコンピュータによる解析手法を指します。多くの企業で流体に関連する機器を開発する際に使用しており、今回のフェアリングの形状最適化にも不可欠なアイテムでした。以前は非常に高価なソフトウエアと解析用の大型コンピュータが必要なため、小規模事業者レベルでは手が出せませんでした。近年、日本のベンチャーが一般のパソコンでも実行可能な流体解析ソフトを安価なサブスクリプションで提供をしており、今回はこれを活用させてもらいました。開発には多くの形状のフェアリングを解析し、どの形状が小型で空気抵抗低減効果が得られるかを比較しました。また、実際の風洞実験と比較して結果に差がある場合は、その原因を特定するため解析条件を変更して何度も解析を繰り返しました。今回のフェアリングが完成するまで、解析だけで延べ5か月程度かかっています。
完成への第一歩。試作までの過酷な道のり
試作品の製作にたどり着くのにも苦労しました。新製品を完成させるには、何度も試作を繰り返し改良のための試行錯誤が必要となります。当初は外部の3Dプリンターに製作を委託しようと考え、何か所も見積を御願いしましたが、最高で1式100万円近い回答も有りびっくりしてしまいました。そこで3Dプリンターを導入しようと決意したのですが、調べてみるとフェアリングが試作できるような3Dプリンターは、安価なものでも80万円以上であることがわかりました。それで購入費用調達のため小規模事業者持続化補助事業に応募することにしました。起業したばかりで実績がなく採択のハードルは高いと言われましたが、IDEC(横浜経営支援財団)および商工会議所のアドバイスを受けながら自分で全ての資料を作成し提出した結果、無事採択されました。そして、ようやく2022年10月に念願の3Dプリンターを導入し、試作を開始しました。
市販用モデルのプロトタイプが完成するまで多くのモデルを試作
アンケートをもとに開発方針を転換
2022年11月初旬にようやく試作品が完成した後、ユーザーの意見を収集するため試作1号機を自前のロードバイクに装着し、サイクリングロードの休憩場所でアンケートを実施しました。自転車用フェアリングに否定的な意見も多かったのですが、その最大の理由は、「重量増加」、「横風による操縦安定性の悪化」でした。横風については当初より独自構造で対策をしていましたが、軽量化を達成するにはフェアリングの形状とサイズを一から再検討する必要がありました。急ぎ一からデザインと解析をやり直し、ようやく2022年12月末に重量を約30%軽減した小型軽量の自転車用フェアリングi-zero(アイ-ゼロ)プロトタイプを完成させ、ホームページ上で公表しました。
第一回風洞実験、挫折と再検討
完成したフェアリングで目標の性能が得られるかどうかは、風洞試験装置内に人が乗車した実際の機材を設置して風による抵抗を計測し検証する必要があります。しかしながら実物サイズを試験できるような大型の風洞試験装置は、車両メーカやJAXA等の研究機関等が所有しているだけで我々小規模事業者が簡単に試験することはできません。ところがタイミングよく2023年3月、静岡県沼津市に自転車も試験可能な風洞試験設備が開設されたので、この設備で開発したフェアリングi-zeroを試験しました。自信をもって試験に臨みましたが、予想に反して目標に到達せず、挫折を味わいました。その後気を取り直し、急遽製品改良のための原因究明と対策に着手することになりました。
外部の風洞試験装置
市販用プロトタイプi-1.0がようやく完成
性能未達を改善するため、まず第一に流体解析の設定条件を見直しました。次に、解析の妥当性を適時確認するため、自前のミニ風洞を製作しました。これで社外の風洞で試験をしなくても、試作品の相対評価が手軽に行えるようになりました。解析と試験を何度も繰り返し製品改良には4か月かかりましたが、プロトタイプi-1.0が2023年7月末に社外の風洞試験でようやく目標性能に到達しました。この結果をホームページと動画配信サイトにリリースしたところ、視聴回数が急増し手ごたえを感じたため、市販化に向けてクラウドファンディングにチャレンジすることにしました。
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自転車用フェアリング i-1.0の特徴
独自開発した自転車用フェアリング i-1.0の5つの特徴を以下にご紹介します。
- 自転車走行中の空気抵抗を軽減し、向かい風で少し楽に走ることができる
自転車にフェアリングを装着することで空気の流れがスムーズになり、走行中の「前面と背面の圧力差」が小さくなるため、空気から受ける力が軽減し、向かい風でも少し楽に走行することができます。以下に外部の風洞試験で計測した空気抵抗軽減効果を示します。
- 市販の自転車にも簡単に後付けできる
自転車用フェアリングは市販の自転車のフレームに簡単に取り付けることができます。慣れれば5分以内で脱着ができます。
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- 軽量、コンパクト
流体解析および風洞実験により、軽量かつコンパクトでも空気抵抗軽減効果が得られるようデザインされています。重量は400g、幅はハンドルよりも狭く、装着しても先端は前輪より前に出ません。
- 横風の力が直接ハンドルに作用しない
ハンドルやハンドルに直結した前輪周辺に取付けられたパーツは、横風を受けた時に力がハンドルに直接作用するため、風が強いと操縦性に悪影響がでます。しかしながら、本製品はハンドルではなくフレームに取り付けるフレームマウント式なので、横風の力が直接ハンドルに作用せず、ハンドル操作に対する影響が軽減されます。
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- 独自のユニークな構造
自転車用フェアリング(model:i-1.0)は、取得した特許をベースに製品化したものです。そのため、他では同一構造の製品を手に入れることはできません。
クラウドファンディング公開時の反響と海外市場を視野に入れた今後の展開
マクアケでの公開当初、「こういうのがほしかったです。期待して待っています。頑張ってください!!」というご声援をいただき、大変うれしく思っています。クラウドファンディングでの支援数は伸び悩んでいますが、応援してくださるサポーターの方がいる限り、諦めずにユニークで有益な製品を提供していきたいと考えています。ユニクロ創業者の柳井正氏は著書「1勝9敗」で、成功することの難しさと、チャレンジ精神の重要性を書かれており、これを手本に「何度失敗しても諦めずチャレンジ」するマインドを持ち続けています。国内での拡販が難しい場合は、自転車ユーザーが日本と比較して圧倒的に多い海外市場でのクラウドファンディングを検討します。
海外市場
海外では同様のエアロパーツがクラウドファンディングサイトに掲載された実績がありますので、海外で再チャレンジすることを検討しています。
国内市場
当面、ネットショップで数量を絞って販売することを計画しています。
次世代自転車用フェアリングの開発、共同研究の公募
自転車用フェアリングの研究はまだ始まったばかりです。研究を進めることでさらに軽量で空気抵抗軽減効果の優れた製品を生み出すことは可能と思われます。ただし小規模事業者が単独で高度な研究を進めていくことは難しいため、共同研究等、支援いただける外部機関を公募したいと考えています。
新ジャンルへの挑戦
現在、自転車とは全くジャンルが異なる新製品の開発を進めています。この商品については、遅くとも2024年の後半までに製品をリリースする予定です。
おわりに
当初は、自前のパソコン1台と自転車1台のみのスタートでしたが、多くの方のサポートを受けて一歩一歩階段を登るように前進し、ようやくビジョンを具現化した製品を市場にリリースするところまで到達しました。無償でサポートいただいた各団体の方々には、略儀ではありますがこの場をお借りして御礼申し上げます。
事業主概要
名称:CdEaK-JPN(シーディーク・ジェイピーエヌ)
所在地:神奈川県横浜市港南区
事業内容: 新製品の設計、開発、販売、コンサルティング
Eメール:cdeak-jpn@jcom.zaq.ne.jp
HP:https://cdeak-jpn.amebaownd.com/
動画配信URL:https://www.youtube.com/channel/UCrO7_xGp2JmHvnf4sPVGFzw
*1:文献(サイクルサイエンス、河出書房新社)に記載されている時速30㎞走行時の数値から算出したものです。
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