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作家・柴田哲孝氏も高ぶる新証言、急浮上した町工場…下山事件の ... - 読売新聞オンライン

 「大叔母が描いた見取り図と全く同じだ……。じゃあ、大叔母が言っていた鉄工所って、ここのこと?」。作家の柴田哲孝(65)は、僕が差し出した町工場の見取り図を見つめながらつぶやいた。彼は、ノンフィクションの大作「下山事件 最後の証言」と、その取材を下敷きにした小説「下山事件 暗殺者たちの夏」(いずれも祥伝社)の著者だ。1949年に初代国鉄総裁・下山定則(当時47歳)が命を落とした「昭和史最大のミステリー」下山事件の研究における、現代の第一人者といっていい。その彼が、明らかに高ぶっていた。

 2023年5月12日朝、華やいだ雰囲気が漂う東京都心のホテルのカフェで、僕たちのテーブルだけは、秘密を共有する緊張感と、答え合わせをするような高揚感に満ちていた。長年取材してきた「新証言」の重みを確かめるために、僕は彼と会っていた。

 下山事件の新証言――。僕がその証言者に出会ったのは2006年のことだ。東京都足立区で開かれた下山事件の捜査書類とみられる 「ガリ版資料」 の展示会を見学し、日を改めて展示を企画した足立区立郷土博物館を訪ねた。何か貴重な情報が来場者から寄せられていないか、聞きに行ったのだ。

 展示を担当した多田文夫学芸員は、「旧日本軍関係者の子孫と名乗られる方が来られましたが、これといった情報はありませんでしたね」と、残念そうに首を振った。「ただ、こういうものを置いていかれた方がいます」と、10枚ほどの紙の束を差し出した。数枚めくってみたところ、職人と妻の会話を軸にした自伝的な小説のようだ。

 「あんたやお兄さんがやっていた荒井工業はあの頃一体何を作っていたのですか?あんたが持っていたあのオーバーは、誰から買ったのですか?あんな高価なものを」

 「あれはお前、鉄道弘済会から特別に買って貰ったものです」

 「私は、下山事件に荒井工業が関係しているのは分かっていました。何がどうなのかはよく知りませんが」

 「――お前、その様なことはしゃべらない方が良いよ。理由は色々あるがとてもヤバイことなのだ」

 下山事件に「荒井工業」が関係している? 今まで聞いたことがない話だし、会社名も初耳だ。ただ、鉄道弘済会といえば当時、駅の売店などを運営しており、国鉄と深い関係があった。僕は、引き込まれるように読み通した。書かれていた内容はこうだ。

 荒井工業という町工場では、下山事件の頃、ジュースミキサーを製造して鉄道弘済会に納めていた。駅の売店に置くためだ。弘済会の「ある男」が顧問として工場に出入りしていたが、下山事件の後、姿を見せなくなった――。

 初めて読む話ばかりだが、作り話なのか実話なのか見当もつかない。多田学芸員によると、小説を置いて行ったのは高齢の男性で、面識はなく、連絡先もわからないという。表紙に記されていた男性の名前をメモした僕は、会社に戻って電話番号を調べた。自宅はすぐにわかった。下山が死体で見つかった現場の近くに住んでいた。

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