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エネルギー危機の時代、原子力発電をどうする? - 経済産業省 資源エネルギー庁

「エネルギー危機の今、あらためて考えたい『エネルギー安全保障』」でもご紹介した通り、世界は今、エネルギー費用の高騰、資源量の低減と獲得競争など、これまでにないエネルギー危機におびやかされています。「エネルギー安全保障」の問題が各国で浮上する中、ふたたび注目が集まっているのが、原子力発電です。今回は、欧州を中心に起こっている原子力政策の変化とともに、その背景にある原子力発電の特徴を見ていきます。これを機に、みんなで原子力発電についてあらためて考えてみましょう。

世界各国の原子力発電の今

新型コロナウイルス感染拡大からの経済活動の復帰などにより、原油や液化天然ガス(LNG)のニーズが急激に高まり、その価格は近年高騰していました。そこに、2022年、ウクライナ侵攻がぼっ発。ウクライナ情勢以降、ロシアが天然資源の輸出量を絞り、西側諸国に圧力を加えたことや、ウクライナ侵攻に対する制裁として、西側諸国がロシア産資源の禁輸措置などをおこなったことで、さらに価格が高騰しています。

こうした世界的なエネルギー危機が起こる中で、ロシア産資源への依存度が高かった欧州各国は、2022年、エネルギー安全保障に関する政策を発表。その中で、原子力発電についても言及しています。

英国

2022年4月に発表した「エネルギー安全保障戦略」の中で、原子力発電を「唯一の信頼性の高い実証済みの低炭素電源」と言及。「2050年までに発電割合を現在の15%から25%までに拡大し、現在の約3倍以上となる最大24GW(ギガワット)の導入を目指す」としています。また、原子力発電所の新規建設を支援する政府機関の設立で、投資を加速することを決定しました。

フランス

2022年2月、マクロン大統領が原子力を低減させる目標を撤回し、2050年までに6基の原子力発電(欧州加圧水型炉、EPR)を建設し、さらに8基のEPR2(EPRの改良版)建設に向けた検討を始めると表明しました。また、エネルギー危機ぼっ発後は、エネルギー安全保障を確保していく観点から、原子力産業に対する政府からの出資比率を高め、関与を強化することを決めました。

ドイツ

2011年の法改正で脱原子力が法制化され、国内の脱原子力を進めていました。当初の方針では、2022年12月末に最後の3基が閉鎖され、脱原発を完了する予定でした。しかし、ロシアからのガス供給が途絶することなどによりエネルギー事情が厳しさを増したことから、2022年11月、原子力発電3基の運転を2023年4月15日まで延長することを決定しています。

ベルギー

2022年3月、現在の地政学的な状況や化石燃料からの脱却を強化しようと、2025年に40年運転をむかえ閉鎖する予定だった原子力発電2基の運転を、10年間延長する方針を決定しました。

このような、原子力発電の“見直し”ともとれる動きは、欧州以外でも起こっています。たとえば韓国は、2022年、「新政権のエネルギー政策の方向性」を発表。その中で前政権の脱原発政策を撤回し、原子力発電の比率拡大などを打ち出しています。

安全保障の観点から見た原子力発電

各国でこうした動きが出ているのは、現在のエネルギー危機において、原子力発電が、安価で低炭素なエネルギーを提供できること、また「ベースロード電源」(一定の量の電気を安定的につくりだすことのできる発電方法)であることや、電力系統の変動に対応して需給バランスを維持できることから、エネルギーの安定供給に役立つためです。

原子力発電は、投入した燃料の量に対して、つくることのできるエネルギーの量が圧倒的に大きいという特徴があります。たとえば100万kWの電力を生み出す原子力発電を1年間運転すると、21トンの燃料(濃縮ウラン)が必要となります。一方で、同じ100万kWの出力(電力量)の火力発電を1年間運転すると、天然ガスでは95万トン、石油では155万トン、石炭では235万トンが必要となります。

こうしたことから、原子力発電は、燃料を交換した後1年以上発電を継続させることができます。さらに、現在日本国内に保有する燃料だけで数年は発電を維持することが可能です。そのため、原子力発電は「準国産エネルギー源」(IEAは原子力を国産エネルギーとして一次エネルギー自給率に含めており、我が国でもエネルギー基本計画で「準国産エネルギー」と位置付けている)と呼ばれ、エネルギー安全保障に重要な「エネルギー自給率」を高めることに寄与しています。

また、原子力発電の発電効率の高さは、運転コストが安価で変動も少ないという経済性の面からも、安全保障に貢献します。原油やガスの価格高騰を考えれば、なおさらです。加えて、国土あたりの平地面積の割合が少ない日本では、面積あたりの発電効率が高いので、一定量の電気をつくるのに必要な面積を抑えられるメリットがあります。

脱炭素の観点から見た原子力発電

脱炭素の観点で見ると、原子力は、現在利用できる、運転時にCO2を排出しないエネルギーのひとつです。

欧州議会と欧州理事会が作成する「EUタクソノミー」は、EUのサステナビリティ方針に貢献する事業をリストアップしたものですが、2022年2月2日、原子力の取りあつかいに関するドラフトが承認されました。以下の条件に合う原子力は、EUのサステナビリティ方針に貢献するとされています。

リストアイコン 2045年までに建設許可を受けた新規の原子力発電
リストアイコン 2040年までに延長認可を受けた既存の原子力発電
リストアイコン 放射性廃棄物の管理に関し、EUタクソノミーに記載された条件に合致すること

一方で国際エネルギー機関(IEA)は、2022年6月に特別報告書を発表。その中で、IEAが提唱する「2050年実質ゼロ排出量シナリオ」を達成するためには、「2020~2050年の間に原子力発電が倍増し、原子力を活用しようとするすべての国で新規建設が必要となる」としています。

また、「原子力の長期運転により、ほかの低炭素技術とくらべて大幅なコスト削減が見込まれる」、「各国が再生可能エネルギーを主体とするエネルギーシステムへの確実な移行を進めるためには、原子力発電は大きな役割を果たすことができる」とし、「原子力なしでそのような持続可能かつクリーンなエネルギーシステムを構築しようとすれば、その方法は、より困難で、よりリスクが高く、より高価なものになる」と指摘しています。

そこで、IEAは、「安全が保障されるかぎり、既存炉はできるだけ長期に運転を継続すべき」、「新型炉への投資を支援すべき」、「高レベル放射性廃棄物の安全な処分には、国民理解が鍵である」などを、各国の政策立案担当者へ勧告しています。

日本では、2月10日、グリーントランスフォーメーション(GX)実現に向けた基本方針が閣議決定されました。その中で、原子力については、東京電力福島第一原子力発電所事故の反省と教訓を一時たりとも忘れることなく、安全性を大前提にエネルギー基本計画を踏まえて原子力を活用していくことが表明され、①安全を前提としたうえでの再稼働の推進、②運転期間の延長、③次世代革新炉の開発・建設、④バックエンド問題への進展に向けた取り組みなどの方針が示されました。主な取り組みについては、今後このサイトで詳しくご紹介していきます。

現在のエネルギー安全保障は、オイルショックが起こった時代とは大きく変わり、環境政策や、さまざまなエネルギー資源および産業と密接にリンクしています。こうした中で、私たちは、安全保障と環境政策における利点を持つ原子力発電をどのように取り扱うべきなのか、考える時が来ています。

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電気・ガス事業部 原子力政策課

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長官官房 総務課 調査広報室

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