食べ物のサプライチェーン(供給網)を見直さないと、脆弱な日本は危ない。強烈な猛暑の影響で価格が高騰する「トマトショック」も起きており、2024年以降も危機は深まる。国内の野菜供給の5%を占めるカゴメは、世界からトマトやニンジンを集める体制を強化している。
■連載予定 ※内容や順番は予告なく変更する場合があります
(1)カゴメ、地球沸騰「トマトショック」と戦う NECとAI活用(今回)
(2)リンガーハット「国産野菜100%」死守 食材高騰時代のコスト戦略
(3)ホタテの悲劇、深刻化は2024年 「国民1人5粒」は流通すら課題
(4)「ビール離れ」を猛省、キリン役員が懸ける2割高価なクラフトビール
(5)物流2024年問題、農産物に大打撃 神明とNTT、デジタルツイン市場構築へ
(6)ローソン、値上げと値下げの2正面作戦
(7)日本農業絶滅の救世主、ロボ収穫やっと実現 スタートアップ躍進
「温暖化は10年後や20年後の話じゃない。食品業界にとって目の前で起きている大問題だ」
カゴメの山口聡社長は8月4日、茨城県鉾田市の契約農家を訪れて驚嘆した。トマト畑の気温は40度を超えており、足を運ぶとすぐ汗だくになった。

カゴメの山口社長は契約農家の現場を回っており、温暖化の影響が急速に表れていることに驚いた
JAほこた(同市)は、60年前からカゴメと契約してトマトを供給してきた。例えば1970年代や80年代は8月の最高気温(同市の基準地点)がおおむね32度ほどだったが、2023年は37.8度に達した。畑のように日陰のない場所で実測するとさらに高いのだ。
23年夏は、世界の平均気温が12万年ぶりの高水準になったという研究もある。国連のグテーレス事務総長は7月、「地球沸騰の時代が到来した」と強烈な危機感を表明した。国際労働機関(ILO)は、気温がセ氏33~34度以上で人間の生産性は半減すると見ている。そして気候変動により、農業分野の働き手が最も影響を受けると試算した。少なく見積もっても30年には、世界で約5000万人分の労働時間が丸ごと消えるインパクトがあるという。
暑すぎて傷むトマト
トマトを成長させるためには、1日の気温のメリハリである日較差が大きい方が望ましい。夜も気温が高いままでは色づきが悪くなる。もちろん昼間に暑すぎるのも問題で、日照りで葉が枯れると実に直射日光が当たりすぎて傷む。実際にポルトガルの多くの農場では、収穫量が減少している。
水不足も喫緊の課題だ。米カリフォルニア州はカゴメも頼るトマトの大産地だが、ここ数年は干ばつと山火事が頻発している。「水を確保できる分しか農産物を作付けできないので、調達計画には大きく影響している」と山口社長は言う。
トマトは世界中で夏に収穫しており、この季節に異常気象に見舞われれば、ケチャップなどのトマト製品は翌年の値上げ要請にもつながりかねない。加工用トマトはいったんジュースにしてから水分を飛ばし、約6倍に濃縮してペースト状で保管。それを徐々に日本へ輸入して使っているのだ。

米カリフォルニア州や欧州の夏が猛暑でトマトの収穫状況に影響すると、代替調達にはコストがかかる。トマト加工品や野菜ジュースの原価管理は難しくなっている
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