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トリッカーズが見据える、新たなラグジュアリーとは?:アエラ ... - 朝日新聞デジタル

1829年、靴職人だったジェセフ・トリッカー氏によって生まれたシューファクトリー「トリッカーズ」。英国の伝統的なカントリーシューズをつくり続けた功績が認められ、1986年にはロイヤルワラント(英国王室御用達)の称号が与えられた。

来日中のトリッカーズCEO兼マネージメント・ディレクターであるマーティン・メイソン氏に話を伺った。彼は英国の名だたるブランドでキャリアを積み、2015年にトリッカーズに参画。アメリカをはじめとするアジア各国、とくにここ数年は日本での販路拡大に注力してきた。

「コロナによるパンデミックが収束し、日本の消費者の動向は明らかに変わったと感じます。社会や環境への影響にも配慮し、高価な買い物だけに興じる消費主義から、その人が何に重視し、何に価値をおいて商品を購入したのかが問われる時代。とくに目の肥えた日本のみなさんは、伝統的なデザインや品質の良さだけでなく、製造工程にも価値を見出す傾向がありますからね」

たしかに気に入った革靴がどこでつくられ、どういうプロセスを経て商品化されたのか、対象が欲しいモノであればあるほど、その背景にあるストーリーを日本の消費者は付加価値として捉えるのかもしれない。

「消費者が“真の高級品”を見定めるためにも、どこでどうつくられたかは重要です。トリッカーズは、革靴の聖地として知られるノーサンプトン最古のシューファクトリー。今も多くの職人たちの卓越した技術と豊かな経験によって支えられています」

そう誇らしげに語るマーティン氏。この日、彼の足元を演出していたのは、履きなれたGRASSMEREという名のレースアップブーツ。さりげなく刻まれた履き皺が味わい深い。

トリッカーズのシューズには耐久性に優れたダブルソールと履きこむほどに馴染むグッドイヤーウェルト構造が採用されている。グッドイヤーウェルト構造はソールの再構築(修理)が可能な設計になっている一方、製造のプロセスには、彼が言う「職人の高度な技術と靴づくりの経験」が必要とされる。履きなれたシューズをできるだけ長く愛用してほしい、そんなつくり手たちの思いが伝わってくるようだ。

「高級革靴などのラグジュアリー市場は、これまでのような1、2シーズンで使い捨てしてきた時代から、品質の良い高級品を修理しながら使い続ける、言わば“良心的な贅沢”という新たな時代へと突入していくと思っています」

200年近い歴史を誇る老舗ブランドは、先駆者としてすでに未来を見据えて歩きはじめている。

取材協力/トリッカーズ青山店
営業時間11:00~20:00
住所東京都港区南青山5-4-27
電話番号03-6805-1930

Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT)
Text:Satoshi Miyashita

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