マーケター精鋭集団・刀を率いる森岡毅氏は、USJを皮切りに各地のテーマパークの再生を成し遂げてきた。彼のもとには常に新たな構想があり、その勢いはまさに「テーマパーク無双」状態。2022年10月からは、入場者数でTDR、USJに次ぐ規模のハウステンボス(長崎県佐世保市)の運営支援を担っている。協業して約1年、その成長戦略を聞いた。
※日経トレンディ2023年11月号より。詳しくは本誌参照
マーケター・実業家 刀・CEO 森岡 毅氏
1996年神戸大学経営学部卒。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)を経て2010年、ユー・エス・ジェイに入社。17年にマーケティング会社・刀を設立。独自のノウハウ「森岡・刀メソッド」を武器に、様々な分野でプロジェクトを推進中。「日本最強マーケター」の異名を取る
本格的建造物が最大の資産。「憧れ」の聖地に生まれ変わる
——刀はテーマパーク事業において常に卓越性を示してきました。力を入れている理由は?
森岡 テーマパークは日本の観光産業の中核となる分野だからです。地域活性化における大型かつ重要な案件と位置付けています。
テーマパーク無双の主な軌跡
・2010(森岡氏入社)〜16年 USJ(大阪市)
経営の危機に瀕していたパークを僅か数年でV字回復させ、入場者数世界第4位のテーマパークにまで押し上げた
・2017年〜 西武園ゆうえんち(埼玉県所沢市)
70周年を迎える施設の「古さ」を、昭和ノスタルジーがもたらす「幸福感」という価値に転換。21年の新装開業を手掛け、V字回復に導いた
・2018年〜 ネスタリゾート神戸(兵庫県三木市)
経営破綻した年金保養施設の再生を支援。20年に黒字化を達成。22年に経営権を共同取得した
・2022年10月〜 ハウステンボス(長崎県佐世保市)
ハウステンボス社と協業し、全国区となる飛躍的成長を目指す。約1年で入場者はコロナ禍前の水準に回復。客単価2桁増、遠方客も増加中
・2025年夏、開業予定 沖縄・新テーマパーク(沖縄県今帰仁村、名護市)
刀が主導し、沖縄県北部の大自然を生かした新パークを建設中。アジアの富裕層を取り込む狙い。沖縄の“ハワイ超え”も目指す
——22年10月からハウステンボス(以下、HTB)の運営を支援されています。成果を語るのはまだ早いでしょうが、現状を教えてください。
森岡 刀の参画から23年9月までの1年間で、ほぼコロナ禍前の業績に回復しました。コロナ後の反動に見えるかもしれませんが、比較できる最新数字の業界平均より2桁上回る伸びとなっています。即効性のある領域、例えばイベントの質の改善、広告の作り方や流し方に刀のノウハウを導入して結果を出しています。
——どのような理由から、参画を決意したのでしょうか。
森岡 日本の観光産業にとってHTB再成長の意義は大きく、その価値向上は長崎を起点として九州全域、ひいては日本の経済活性化に貢献できると確信しています。HTBはジャパネットたかたと並ぶ、佐世保の誇りです。私は親戚が佐世保にいたこともあり、地元の人に大切に育まれてきた30年という歴史の重みを感じています。むろんHTBのポテンシャルにも惹かれました。各地のテーマパークと比べても、HTBの伸びしろは大きいです。私自身も現地に行き、世界中のどのパークよりも建物が本気で造られていることを再認識しました。このとてつもない強みを持った資産をもっと輝かせたいと強く思っています。
——大きな伸びしろを生かすために必要なことは?
森岡 ブランドの設計、これに尽きます。刀の分析によって興味深いことが分かりました。HTBは、長崎を中心とした足元商圏でも全国圏でも、集客の伸びしろがあるのです。足元マーケットについては、TDRの関東圏、USJの関西圏と比べると、日帰り圏である九州北部への浸透率が相対的に低いのです。全国からの集客についても弱く、今はまだ西日本からの来場者が大半です。この事実が意味するのは、ブランドが弱いということです。しっかりとした設計図に基づいてローカルからも全国からも集客できるブランドを築けば、もっと成長できます。大切なのは、HTBに行くとどんな体験ができるかというイメージが消費者の頭の中にできること。そのためのブランドづくりです。
——確かにHTBは一言で「何ができる場所」と表しにくいです。
森岡 そうです。そこで何ができるか分からなければ人は来ない。それを明確にすれば、来場者の滞在時間も伸びます。滞在時間が10分延びると客単価は平均20円上がる法則がありますから、重要なことです。
この記事は会員限定(無料)です。
from "高価な" - Google ニュース https://ift.tt/Yhy4p6X
via IFTTT
Bagikan Berita Ini
0 Response to "刀・森岡毅が明かす「勝ち筋のつくり方」 ハウステンボス編 - 日経クロストレンド"
Post a Comment