先週、iPadOSの最新バージョンである「iPadOS 16.1」と、macOSの最新バージョン「macOS Ventura」が公開になった。
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多数の新機能があるが、中でも目玉は「ステージマネージャ」だろう。iPadの「マルチタスク」「マルチウインドウ」利用を活性化するものであり、それだけ期待された技術でもある。
一方で、iPadOSが「16」でなく「16.1」からスタートすることになったのは、ステージマネージャの産みの苦しみである……という噂もある。本当にそうか裏付ける情報はないが、そうであっても驚きはしない。
実際、ステージマネージャは扱いの難しい技術でもある。
タブレット的なものでどうPC的な価値観・操作性を実現するかは、どこも迷っている最中だ。Windows 11もそのために新機能を用意したし、Androidも「12L」「13」でタブレット指向の機能を強化している。
今回はそんなところから、「PC的なものとタブレット的なもの」の今について考えてみよう。
ステージマネージャとはなにか
ステージマネージャは、簡単にいえば以下のような画面を実現するものだ。iPadの上でアプリを複数「ウインドウの形」で同時に表示し、最近使ったアプリへの切り替えを簡単にする。
ステージマネージャを使わない場合、全画面、もしくは左右分割でアプリを使うのが基本だったが、ステージマネージャを使えば「重ねる」という、PC/Macではお馴染みの方法が使える。ウインドウの端にある「角丸」のマークを掴めばウインドウのサイズは変更可能。これはこれで便利なものである。
ただしステージマネージャはすべてのiPadで使えるわけではない。
アップルによれば、iPadOS 16.1では「iPad Air(第5世代)、12.9インチiPad Pro(第3世代以降)、11インチiPad Pro(第1世代以降)」が対応機種となる。初期には「M1以降を搭載している機種のみ」だったから、これでも対応機種は増えている。とはいえ、比較的新しいモデルのみに限定されていることに違いはない。それだけ、より多いメインメモリーとプロセッサー性能を必要としている、ということだ。
映像や電子書籍、ウェブなどのビュワーとしてiPadを使うなら、ステージマネージャの出番はあまりない。しかし、文書作成やビデオ編集などをするなら、ステージマネージャは必要な機能であり、大きな変化だ。
PC/Macでのマルチウインドウそのものの動作、というわけではなく、ちょっと操作にクセがあり、慣れは必要だ。また、同時に複数のアプリを立ち上げている際、日本語の「ライブ変換」をオンにしていると文字入力の挙動がおかしい(なお、不具合についてはアップルにフィードバック済みだ)。
一方、Macにも同じ「ステージマネージャ」が導入されたが、こちらはiPad以上に好みが分かれる。Macでのステージマネージャはマルチウインドウを実現するものではなく、最近使ったアプリの切り替えを簡便化するものだからだ。その方法は他にもあり、macOS上ではそちらの方が手軽ではある。これから操作を覚える人ならともかく、Macに慣れた人がわざわざ利用する必要性は薄いようにも思う。特に、画面が狭くなりがちなノート型ならなおさらだ。
「マウス」に回帰しつつタッチ最適化を進めるWindows 11
iPadOSでステージマネージャを導入するなら、そもそもこのハードで「タッチ対応をしたmacOSを動かせばいいのでは」と思う人もいるだろう。その疑問は、iPad Proが出たあたりから、いやそもそも、2010年にiPadが出た時からあった話ではある。
ただ現状、タッチとマウス/タッチパッド操作はかなり異なるもので、そのまま導入してもうまくいかない。双方の体験をダメにせず、その上でなんとかする方法をアップルは模索しているのだろう。
先に「タブレットとPCで同じOS」を採用したWindowsも、本当にずっとそのことに苦しまされてきた。タッチの方向に振った「Windows 8」はメインストリームのPCユーザーに良い評価を得られず、Windows 10からはマウス/タッチパッドのPC操作を軸に置きつつタブレット的なタッチ操作も配慮する……という流れになった。Windows 11でも同様だ。
Windows 8のような「全画面でタッチUI向けの巨大なボタン的スタート画面」はなくなったが、初期からWindows 11ではタッチに相当配慮している。タッチモードになると操作中のみ「ウインドウを操作しやすくする領域」が現れたり、縦長に持った時「縦にアプリを2つ並べる」ことができるようになったりもした。
余談だが、「縦でアプリを2つ並べる」要素は、いまだiPadでは実現していない。それどころか、ステージマネージャは基本的に「横長画面専用」であり、縦画面は「1画面アプリのためのもの」と位置付けられているようだ。この辺、最新の「第10世代iPad」でインカメラが「横向き」に変わったことを考えると、今のiPadのありようも見えてくる。
話をWindowsに戻そう。
最近の大型アップデート「22H2」でも、タッチを意識した「ウインドウ整列用UI」が搭載されるようにもなってきている。
Windows 11の動作するPC自体が高性能かつ最新のもの、という部分もあってか、Windows 11で「タブレット的」に使う場合でも、重量などを除けば不快感は減っている。悪いのは「安価で遅いプロセッサーを使ったWindowsタブレット」なのであり、Windowsというわけではない。
もちろん、まだ気軽さやバッテリー動作時間などの面で「タブレットとしてのWindows」がiPadに劣る部分はある。だがそこも、ARM版Windows 11の進捗で状況が変わっていくようにも思える。
そう考えると、最新の「Surface 9 Pro」でARM系の「SQ3」搭載モデルがメインストリームとして訴求されているのは、非常に興味深いことに思える。
タブレット回帰が明確なAndroid
Androidはしばらくタブレットには不遇な時代が続いていた。低価格製品は出るが、それも本当に価格重視であり、AmazonのFireタブレットと競合する市場……という状況だったと思う。
そこでちょっと状況が変わってきた。Googleが「Android 12L」でタブレット向けのUIを指向、さらにAndroid 13でその要素がほぼ引き継がれた。2023年には「Pixel Tablet」も出る。
筆者の手元には、Android 13が動作する「Galaxy Z Fold 4」と、ちょうどAndroid 12Lのアップデートがあった「Surface Duo 2」がある。
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これらの「折りたたみ」系スマホは、大画面上でのタブレット的UIをAndroidが強化するきっかけになったものでもある。それぞれ独自に改良していたものだが、最新OSではより操作性が良くなった。特にAndroid 13を搭載したGalaxy Z Fold 4では改善が顕著だ。
以前から画面分割やウインドウとしてのアプリのオーバーラップはできたが、アプリ呼び出しが今ひとつ使いづらく、筆者はあまり活用していなかった。しかしAndroid 13になってかなりUIが良くなったので、画面分割の利用シーンは増えたように思う。
一方でSurface Duo 2については、さほど変わっていない。もともと「2画面にそれぞれアプリを表示して使う」コンセプトなので、以前からそういう使い方ができた。逆に、フローティングウインドウや画面分割はできない。それが悪い、というよりも「違う方向を目指している」印象だ。
この種の高価なスマホでは、その中である程度仕事などもしたくなる。iPadと似た宿命を背負うわけだが、そのための基盤は整ってきたように思う。特にサムスンは、長く色々試行錯誤してきたこと、海外ではタブレット製品も出していることなどから、非常にこなれている。
現状の市況では、高価なスマホや高価なタブレットには逆風である。だがそれだけに、「UIを改善して色々なことに使える」ことが重要になってきたのではないだろうか。
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