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【ディープテックを追え】AI開発者が完全自動運転EV、目指せレベル5!|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社 - ニュースイッチ Newswitch

「米国や中国で電気自動車(EV)スタートアップが多数立ち上がっている。日本でできないわけがない」。人工知能(AI)研究者らが設立したスタートアップ、TURING(チューリング、千葉県柏市)の青木俊介共同代表兼最高技術責任者(CTO)はこう意気込む。映像認識AIを強みに、完全自動運転「レベル5」を搭載したEVの実用化を目指す。

「レベル4の延長ではレベル5は目指せない」

チューリングはAIシステムを手がけるHEROZ(ヒーローズ)で将棋AI「ポナンザ」の開発リーダーを務めた山本一成共同代表兼最高経営責任者(CEO)と、米カーネギーメロン大学で自動運転の研究開発をしていた青木共同代表が2021年に設立した。

自動運転は各国の自動車メーカーやIT企業、研究所が取り組むテーマだ。精度には段階があり、現在、最も先進的なのが特定のエリアでシステムが運転する「レベル4」だ。米国や中国の一部地域では、レベル4の自動運転タクシーサービスが始まっている。一方、青木共同代表は「レベル4の延長でレベル5を実現するのは難しい」と指摘する。

その理由はレベル4が限定空間での運転だからだ。レベル5では通常の交通環境にある路上駐車や歩行者の行動予測などをしながら運転する。そのためレベル4のように、決められた走行パターンをAIに学習させる方法での実現は難しい。そこでチューリングは、その場で運転操作を判断できるAIの開発を進める。

高価なセンサーも使わない

レベル5のAIには、他の自動車の走行データや歩行者の行動データを解釈し、その後の行動を想像して運転操作を決断する必要がある。同社は既存の自動運転のように、あらかじめ決められたマップを走行するのとは違い、その場の状況に合わせて瞬時に判断を下すようにする。

同社が開発する自動運転車のデモ

商用化を見据え、物体の距離を測るLiDAR(ライダー)などの高価なセンサーは使わず、カメラの映像から判断を下す仕組みを模索。青木共同代表は「映像に補正をかければ、距離を測ることもできるはずだ」と自信をみせる。ライダーに比べ、コンピューターグラフィックス(CG)の人材は多いため、開発面でも有利だという。

開発の様子(同社提供)

またAIだけでなく、EV本体の開発にも取り組む。自動運転のソフトウエアに最適化されたハードウエアを作ることこそ、良い顧客体験になると考えるからだ。自動運転のソフトウエアを軸に、駆動装置(パワートレーン)や電子制御ユニット(ECU)などの構成部品も内製する計画。これと並行し、人材の獲得も強化する。

「打倒」テスラ

7月には約10億円の資金調達を実施しており、23年には既存のガソリン車に高度な運転補助を行う「レベル2」のシステムを搭載して販売する。また同年中に追加で資金を調達し、同時期にAIの学習時間を5万時間確保して自動運転の精度を高める。

「打倒」に掲げる米テスラは既存車のEV化から事業を始め、少量生産車「モデルS」、量産車「モデル3」を展開した。同社もこの手法をまね、将来は少量生産、量産も視野に入れる。テスラがEV化の波に乗ったように、自動運転の波に乗って自動車メーカーへの“脱皮”を目指す。

青木共同代表(同社提供)

自動運転の実現には技術的課題や社会受容性の問題もある。それでも「何かの事情で車に乗れない人々への移動手段を提供する」(青木共同代表)と前を向く。レベル5の完全自動運転EVを世界に届けようと、AI研究者らの奮闘は続く。

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日刊工業新聞2022年8月19日

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