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ニコラス・ケイジ、トリュフを探し当てる愛しのブタを救い出す旅へ - Newsweekjapan

<ブタを奪われ、復讐の旅......。「あの映画をパクったB級映画?」と思わせながらも、実は人間の実存的危機を描き切り、批評家大絶賛&映画賞総なめの話題の映画『PIG /ピッグ』>

「あのニコラス・ケイジが愛するブタを奪われて取り戻しに行く」。そんなストーリーを聞けば、いやでもある種の予感を抱いてしまう。予告編を見た多くの人が思ったはずだ。ああ、キアヌ・リーブスが愛犬の敵を討つためにロシアの悪党どもを殺しまくる復讐アクション映画『ジョン・ウィック』(2014年)のブタ版か、と。

だが、『PIG/ピッグ』は違う(日本では新宿シネマカリテで7月15日から期間限定上映)。もちろん殺しの場面はあるが、それが見せ場ではない。監督のマイケル・サルノスキが本作で描くのは人間の実存的危機だ。

主人公のロブ(ニコラス・ケイジ)は、高価なトリュフを探し当てる貴重なブタと一緒に暮らしていた。ほかに伴侶はいない。米オレゴン州ポートランドの外れにある森に入り、ブタに助けられてキノコを採集し、粗末な小屋に持ち帰るだけの日々。

元料理人のロブは、ブタの餌も丁寧に用意する。何かのトラウマを抱えているに違いないが、表面上は穏やかに暮らしており、訪ねてくるのはトリュフ販売業者のアミール(アレックス・ウルフ)だけだ。

アミールとロブは対照的だ。アミールは商売上手で、言ってみればドラマ『メディア王~華麗なる一族~』に出てくるローマンとケンダルを足して2で割ったような人物。しかし、ロブには彼しかいない。だから2人でブタを救い出す旅に出る。

満腹よりは腹八分目で

もちろん流血のシーンも1つはある。だが『ジョン・ウィック』と似ているのはそこまで。監督はポートランドの美食シーンの裏にある醜悪な迷路を克明に描く。この映画は先が読めない。ストーリーは単純かつ明快だが、私たちの予想を次々と裏切る。

ロブは誰にも止められない嵐のような男だが、『ジョン・ウィック』のリーブスのような格闘はしないし、鉛筆で人を殺したりもしない。

その代わり、ロブの過去がゆっくりと、つまびらかに描かれていく。そしてたいていの人が怖くて下せないような決断を彼が下せる理由が明らかになる。派手さはないが、心理描写が抜群だ。

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