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創業90年以上、谷崎が愛した古書店「京阪書房」閉店へ…京都・河原町 - 読売新聞オンライン

 京都・河原町の繁華街で営業し、作家の谷崎潤一郎(1886~1965年)らに愛された古書店「京阪書房」が18日に店を閉じる。90年以上、学生や知識人らに本との「出会いの場」を提供してきたが、本離れやコロナ禍などで客足が遠のいた。常連客からは「自分の世界を広げてくれた書店がなくなるのは寂しい」との声が聞かれた。(上万俊弥)

 京阪書房は、飲食店が立ち並び、観光客でにぎわう一角にあり、哲学や歴史、宗教など学術書を中心とした古書を扱う。狭い店内には書棚に入りきらない本が床からうずたかく積まれている。1冊100円の文庫本から高価な全集まで1万冊以上になる。

 1928年頃、別の古書店で番頭を務めていた阪倉庄三郎さんが独立し、京阪書房を創業した。

 貴重な人文書や歴史書などが集められ、長年、京都に住んでいた谷崎潤一郎も足しげく通った。谷崎の日記には「京阪書房に立寄り丹熊にて食事して帰る近古史談をさがしてゐたところ京阪書房主人早速見つけて来てくれる」(60年5月29日)など、何度も店名が登場する。

 現在は3代目店主の阪倉三郎さん(81)が切り盛りする。三郎さんは、庄三郎さんの孫・三津子さん(79)と結婚し、27歳で養子として店を継いだ。バブル期には「坪1億円で買う」と不動産業者から持ちかけられたが、「先祖に悪い」と断り続けた。

 池波正太郎(1923~90年)も常連で、ふらりと訪れては三郎さんと店内で茶を飲み、旅先の話で盛り上がったという。

 立命館大研究員で日本史が専門の島田龍さん(45)は学生時代、この店で初めて専門書を買った。「意を決して購入した瞬間、『学問の熱』を感じた。自分の出発点」と懐かしむ。生活に困窮し、書き込みをした本を持ち込んだ時も、三郎さんが察して買い取ってくれたという。

 50年来の常連という同志社大名誉教授の竹居明男さん(72)は「この店は、ずっと学べる卒業のない大学のようだった」と惜しむ。

 建物は解体し、売れ残った本は処分する。高齢で店に立つことが体力的にもきつくなったという三郎さんは「本を通して多くのお客さんと出会うことができた。感謝しかありません」と穏やかな表情で話した。

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