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新川通には桜並木がある 五輪マラソン巡り「何もない」と言われたが… 住民育てた誇りの10.5キロ色づく:北海道新聞 どうしん電子版 - 北海道新聞

 札幌市北西部を走る新川通沿いの延長10・5キロの桜並木が、色づき始めた。昨年10月に浮上した東京五輪マラソンの札幌移転で一時、コースとして取り沙汰された際、「何もない」などと否定的な見方をされた新川通だが、住民が植えた755本のサクラの並木は整備から20年が過ぎ、地域の誇りだ。今年は花見のイベントも新川通を会場にしたマラソン大会も中止となったが、サクラは住民の心を癒やすように咲いている。

 「やっぱりここのサクラが一番きれいだ」。四分咲きのソメイヨシノを眺めながら、新川さくら並木連合町内会会長の佐久間五十也(いそや)さん(85)が目を細めた。桜並木は「新川通のシンボルに」と1970年代に整備構想が浮上。河川法の規制で一度は断念したが、97年の法改正で植樹が可能になった。

 連合町内会が中心となって、地元企業や住民に協力を呼びかけて98年から資金集めと植樹を始め、3年かけ7・5キロにソメイヨシノとエゾヤマザクラを計755本植樹。もともとあった手稲区側の3キロの並木と合わせ、10・5キロの桜並木が誕生した。寄せられた寄付は2800万円を超えた。佐久間さんは「自分の手で植えた木にはみんなそれぞれ愛着がある」という。

 住民らはその後も枯れたサクラの植え替えやネズミの駆除、遊歩道の清掃をし、並木を手入れしてきた。地域主体で整備に取り組んだことが評価され、連合町内会は2018年度の国土交通省「手づくり郷土賞」にも選ばれた。

 新川通は桜並木と並んで、毎年8月の北海道マラソンのコースとしても知られる。大会には地元13町内会から600人が給水などのボランティアに参加する。新川東町内会役員の沢見俊一さん(60)は「幅広い世代が参加し、地域のコミュニケーションの場になっている」といい、希望者が多く毎年人数の調整に苦労するほどの人気。沿道の住民が自主的にスイカやあめを振る舞う「私設エイド」は、大会の隠れた名物だ。

 そんな地域の誇りを傷つけられる出来事が起きた。東京五輪マラソンコースの候補として新川通の名前が挙がると、全国放送の情報番組で「真っすぐで何もない」「景色も単調」と批判が相次いだ。

 これに対し、会員制交流サイト(SNS)では批判に対抗する声を上げるハッシュタグ「#札幌discover」の投稿が増加。新川通の夜桜のライトアップの写真や「新川通はいいマラソンコース」というランナーの声が発信された。連合町内会役員の岡本しのぶさん(49)は投稿を見て「けなされて傷ついた気持ちが、癒やされた」と笑顔を取り戻した。

 北海道マラソンは今年、開催が見送られ、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、桜並木のライトアップや音楽祭など恒例のイベントは中止となった。見頃を迎えるサクラを地域の人々と囲むことはできないが、佐久間さんは「サクラは毎年咲く。また来年やればいいさ」と前を向いた。(服部貴子)

<ことば>新川通 札幌市北区新川と小樽市との境界を結ぶ道道と市道の通称。全長11キロ。明治時代に排水路として整備された人工河川「新川」と並行していることから、名付けられた。約2万人のランナーが参加する道内最大のマラソン競技、北海道マラソンでは、往復13キロがコースに組み込まれており、最大の難所とされている。

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May 02, 2020 at 11:43AM
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