2007年から始めたのは、東京マラソンのランナーを応援する「マラソン祭り」への参加である。「瀬古利彦とパンキーズ」というビッグバンドを結成し、ゴール地点でランナーを迎えた。
「16年まで10回参加しました。大会前の3カ月間練習し、私もドラムを演奏したり、歌ったりしました。テレビ中継の解説が終わるとすぐにパンキーズに合流し、最終ランナーがゴールするまで演奏しました。海外では選手を応援する文化があって、それをやりたかったんです。やっぱり楽しいことをやりたいんです」
東京マラソンでゴールする人のためにバンド演奏を仕切るのは瀬古の妻、ランナーを音楽で応援したいという希望を実現したものだ。
今は3年前から始めた社交ダンスに夫婦で熱中しているという。
「これまで女房にはいろいろと迷惑をかけてきたからね。夫婦がうまくいくためには女房のやりたいことに合わせないとね。二人で何かするのも楽しいですよ。今度発表会があるから、それを目標にしています」
とほほ笑み、愛妻家の横顔をのぞかせた。ただ、やるからには真剣にやる、という求道者的一面も見せた。修行僧としての魂は失っていないようだ。
思えば現役時代、絶好調の時期に80年のモスクワ五輪を迎えた。しかし、ボイコット……。
「あのときは予想していたので、それほどショックはなかったんです。モスクワ五輪に出られなくても、福岡国際、ボストンと大会があるので、気持ちを切り替えて準備をしました」
80年12月の福岡国際マラソンでは、モスクワ五輪の覇者ワルデマール・チェルピンスキーを抑えて優勝、大会3連覇を記録した。81年4月のボストンマラソンは大会記録で優勝を飾る。80年代前半の瀬古の雄姿は、人々の記憶に刻まれている。
「ダメだとわかったら次を考える。私の信条は、悪いことはすぐ忘れることです」
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May 15, 2020 at 02:00PM
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