新型コロナウイルスの感染拡大で史上初めて無観客となった大相撲。
春場所(大阪場所)の千秋楽は白鵬と鶴竜の両横綱による7年ぶりの相星決戦となった。
ところが無観客で、声援や歓声がない中での取り組みに対しては、「味気ない」「盛り上がりに欠ける」と否定的な声が出た。ただし「音が凄い!ある意味普段より迫力がある」と肯定的な意見も出た。
結果としてテレビの視聴率は低調だ。過去3場所より1~2割低く推移している。
ただし無観客だったため、怪我の功名のような光もさして来た。
同時に、観客の賑わいを前提にテレビを楽しむという、影の部分も浮き彫りにされた。
さらに中継の仕方に、まだまだ工夫の余地があることも見えて来た。
無観客大相撲の光と影を整理しておきたい。
視聴率の動向
ビデオリサーチによれば、春場所初日の世帯視聴率は15.1%(関東地区 夕方5時台)。
過去3場所と比べても遜色はなかった。無観客での開催に、どんな中継になるのか、多くの人が興味をもったのだろう。

ところが二日目。
数字は11.0%と一挙に4%以上下落した。過去3場所と比べても、7掛けほどしかない。その後も11日目まで、以前と比べて1割以上低く推移している。
やはり違和感から離れた人が少なくなかったようだ。
ネット上でも、否定的な声が幾つも見られた。
「あまりにも寂しい。暗い。味気ない」
「やめたほうが良いね。観てて寂しさや虚しさを感じる」
「シュールですよね(笑)。私もテレビで見るのツラいです」
「公開稽古みたいで迫力ないな-」
「金星で座布団が舞わないのはやっぱ違和感」
「やはりお客あっての大相撲」
ヤフーのリアルタイム検索によれば、初日後のSNS上のツイート数は1.2万を超えた。
ところが二日目で3分の1に激減し、ここ数日は9分の1と低調な日々が続いている。当初こそ“物珍しさ”から話題にしたが、興味はあっというまに消え去ったようだ。
「大相撲」と「無観客」で検索すると、感情の割合はポジティブが15%、ネガティブが倍以上の36%。やはり無観客相撲の中継には、否定的な視聴者の方が多いようだ。
世代によって異なる反応
ところが世代別の個人視聴率をみると、異なる風景が見えてくる。

関東地区で2000世帯5000人の視聴状況を調べるスイッチ・メディア・ラボによれば、今場所の視聴率が下がったのは、3-層(男女50~64歳)と3+層(男女65歳以上)。
1層(男女20~34歳)と2層(男女35~49歳)は同じ程度。T層(男女13~19歳)とC層(男女4~12歳)は、上昇している。特に若年女子の躍進は目を見張るものがあった。
もちろん小中高で一斉休校になった影響もあろう。
それでもテレビ東京が17時台に放送する若年層向け番組(『青春高校3年C組』やアニメなど)が、前四週と比べほとんど上がっていないことをみると、特に大相撲がこの世代の目を引いたことは間違いない。
無観客の取組に対しては、SNSにはポジティブな声も多かった。
「ぶつかり合う音が鮮明に聞こえて、たまにトラの唸り声みたいな音聞こえるのカッコよすぎる」
「普段わからないところが見えたりして、なんだかおもしろかったw」
「レア感満載で楽しめました」
「真剣に相撲と向き合えてるの楽しい」
「横綱土俵入りの厳かさが際立つね」
「なんだか神事にも見えてくる」
変化に対しては、若年層ほど敏感に反応したようだ。
NHKは途中から、“応援メッセージ”を募集し、番組で伝えるようになった。これについてのツイートにも、子供たちが楽しんでいる様子が見て取れる。
「無観客の大相撲。子供も一緒に楽しんでいます」
「大相撲が子供たちの間で人気」
「力士同士がぶつかり合う音、息遣い等が無観客でしっかり音声として視聴者に届く事で子供達も新鮮な気持ちで観ているんだろうな」
「未来の横綱や相撲関係者、花嫁さんが誕生したかもしれない」
映像表現の可能性
今場所の視聴率が低いのは、中高年に不人気だったからだ。
テレビは過去40年、テロップを出したり、効果音を加えたり、会場の笑い声を足したりと、賑わいを演出してきた。
こうした刺激に満ちた過剰な演出は、視聴者にチャンネルを変えることを忘れさせるための作戦だった。つまり視聴率対策だったのである。
テレビ視聴者の大半を占める中高年の中には、テレビ局のこうした策略にのせられ、受け身で見続けることに慣れさせられた人が少なくない。
ところが今場所は無観客となり、賑やかしなどの装飾が取り払われた。違和感から見るのをやめた人々が一定数でた所以である。
ところが若年層には、映像メディアとオンデマンドかつピンポイントに向き合う人が増えている。つまり自分が主体となって、情報を取捨選択して楽しむ姿勢だ。
過剰な演出による流動食のような情報を、受け身で消費することを良しとしない人々が増えている。そんな人々には、現場の映像と音声だけで、自分が注目したい部分にクローズアップできる今回の中継がフィットしたのかも知れない。
実は今回の中継に対しては、SNSにこんな提案も出ている。
「止む無く無観客でやってるけど、それを逆手に取って雄大な富士を背景に土俵を組むとか、白浪砕ける日本海を横目にとか、鎌倉大仏に見守られながらとか、格ゲーのステージみたいに名所巡りして欲しい」
「客席にクロマキーを施して、炎鵬の取り組みの時に炎の中から出てくるとか、竜電の時には雲海から稲光と竜が出てくるとかやってみたら」
「大量のカメラで撮影しておいてあとで自由自在に視点を動かせるデータにしておくとかいいんじゃないかなあ」
素材としての相撲の卓越性に刺激され、想像力をかき立てられた人もいたようだ。
ただし日本相撲協会からすれば、神事とつながる相撲を、デジタル技術を絡めて派手に演出することには抵抗があるだろう。
でも、だからと言って全ての可能性を否定してしまうのは惜しい。
そもそも化粧まわしなど派手な演出は、すでに部分的に許されている。
土俵の外で、デジタル加工した魅力的な映像を、登場シーンに紹介するのなら許容できないか。
また今場所は行司差し違えとなる取組が多かった。
こうしたシーンで、自由視点映像を駆使して解説してもらえれば、相撲ははるかに分かりやすく、魅力的になる。
また好取組には、間合いの取り方、足の運び、手の位置、勝負に出るタイミングなど、微妙な動きがふんだんにある。自由視点VODを駆使できれば、強い力士の強さの秘訣を、視聴者が自らの興味し従って堪能できる。相撲を立体的に楽しむ機会を提供できるはずだ。
いずれにしても、期せずして開催された無観客場所のおかげで、相撲には新たなファンを取り込める可能性が見えて来た。
その好機を逃さないためには、テレビ中継だけを前提としない映像表現を追求することだ。
5Gのサービスも、今年から始まる。
技術など武器は着々と整っている。ぜひ次世代の相撲の見せ方をきわめてもらいたい。
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March 22, 2020 at 09:55AM
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