本井宏人
筆による手描きで絵付けした陶磁器を53年間にわたって製造する岐阜県多治見市の蔵珍窯(ぞうほうがま)が、市の無形文化財(上絵付)に指定された。昭和40(1965)年代以降、製品への転写技術が発展して絵付け技術者が減るなか、職人への技術の継承を続けながら、新たな赤絵技術を生み出したことなどが評価された。
蔵珍窯は70年、現会長の小泉蔵珍(ぞうほう)さん(82)が創業した。神主の家系だが、身を立てる実業も必要と考え、名門の幸兵衛窯で修業し、絵付けを学んだ。「食卓で小さな幸せを提供したい」と、量産品と高価な作品の中間を狙った器づくりをめざしてきた。
技法は赤絵、染め付け、織部、青釉(あおぐすり)など。赤色には特にこだわり、ベンガラを約1千日すり続けて、絵の具に使っている。釉薬(ゆうやく)のひびに赤絵の具をすり込む「朱貫入(あかかんにゅう)」という新技術を商品化した。
「一人前になるために10年かかる」という後継者育成にも力を入れ、今は職人4人が働くほか、3人が独立した。昭和30年代には市内に300軒ほどあった上絵付けの事業者は、今は16軒に減り、手描きを続けるのは蔵珍窯を含め2軒しかないという。「職人と技術を100年先まで残せるかが課題」と蔵珍さんは話す。
10年前に社長を長男の衛右(えいすけ)さん(47)に譲った。「技術継承には経営のセンスも必要。無形文化財に個人でなく、団体として選んでもらったのは、職人の励みになる」と衛右社長。オンライン販売や喫茶店経営にも取り組む。
市の無形文化財は、水月窯(美濃窯伝統的窯業〈ようぎょう〉生産技術)、青山双男さん(白天目〈しろてんもく〉)と合わせ3件になった。認定書授与式は6月1日に蔵珍窯であり、市教育委員会の渡辺哲郎教育長が「手仕事による絵付けを、市の宝物として続けていただきたい」と期待を述べた。(本井宏人)
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