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水中写真連載 So Blue:「白鯨」のモデル マッコウクジラの結石が生み出す高貴な香り - 毎日新聞

あおむけで泳ぎ、こちらを見ているマッコウクジラ。U字の白い筋がアゴ=鹿児島県大和村沖で、三村政司撮影
あおむけで泳ぎ、こちらを見ているマッコウクジラ。U字の白い筋がアゴ=鹿児島県大和村沖で、三村政司撮影

 世界最大のコーヒーチェーン店と、1962年に亡くなった俳優のマリリン・モンローさんが愛用した香水には、共通点があります。さて何でしょうか。

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 答えは、マッコウクジラ。今回の主人公です。

 コーヒーチェーン「スターバックス」の名称は、19世紀の米国人作家ハーマン・メルビルが著した「白鯨」の登場人物に由来するとされます。巨大な白いマッコウクジラ=モービー・ディックを目の敵にする捕鯨船のエイハブ船長が、生真面目な1等航海士を「スターバック君!」と呼びつけています。難解な小説ですが、何度も映像化されているので目にした方も多いのではないでしょうか。

 また世界で最も有名な香水とされ、マリリンの「寝る時にまとうのは(衣服などではなく香水を)数滴だけ」という伝説的なエピソードを生んだ「シャネル5番」には、マッコウクジラの「竜涎香(りゅうぜんこう)」が使われています。貴重で高価な香水の原料として、古代エジプト時代から利用されています。色も艶もない話になってしまうものの、竜涎香はマッコウクジラの腸に蓄積した結石です。1%以下の個体にしかできません。排便され偶然、海岸などに打ち上げられたものなどが高額で取引されています。

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 写真のマッコウクジラは、2022年9月に鹿児島県・奄美大島の北西約30キロで撮影しました。最近、この付近の水深900メートル前後に群れが暮らしていることがわかりました。

 ザトウクジラは冬に日本にやってきますが、マッコウクジラは青年期以降のオスを除いた母系集団が、深海のある海域に定住しています。この個体も若いメスだと思われます。10年にも小笠原沖で撮影に成功したものの、そのときも幼いメスでした。

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 この写真では、ひっくり返って腹部を上にしています。右側の白いU字形の線は、アゴです。大きな頭がじゃまをして目より上にあるものを見ることができないのです。見たいものが上にあるときは、このようにあおむけになります。つまり水面付近にいる私を、水深15メートルあたりからじっと見ている。

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 マッコウクジラは、地球上で最大の肉食動物です。深海で大型のイカなどを捕らえています。注目を集めたダイオウイカの天敵。体長はオスだと最大で20メートル近くになるとされ、40~50年かけて成熟したオスほど大きな頭になります。

 モービー・ディックはフィクションですが、単独行動する成熟したオスには攻撃性が強いものもいるとされます。

 それでも、大きな頭を持つ巨大なオスに出合ってみたい。「白鯨」のテーマのひとつと考えられている、人知の及ばぬ大きな存在は神なのか悪魔なのか、という欧米の世界観に私自身はなじめないものの、出合えたときにどう感じるか。私にとって、オスのマッコウクジラは最大の関心事です。(鹿児島県大和村沖で撮影)【三村政司】

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