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女子マラソン逸材、鈴木亜由子の「耐える力」 五輪メダルと日本記録への挑戦:時事ドットコム - 時事通信

天才少女、けがとの闘い

 幾度となく走れなくなっても、必ずはい上がってきた。「耐える力」こそ、彼女の最大の強みかもしれない。東京五輪女子マラソン代表の鈴木亜由子(日本郵政グループ)は、度重なる故障を乗り越えて走り続けてきた。マラソンで15年間破られていない野口みずきの日本記録(2時間19分12秒)を塗り替える力を秘めるとの呼び声が高い。1月末に痛めた右太もも裏の肉離れが癒え、2021年夏に延期された東京五輪に向けて再スタートを切った。(時事通信運動部 青木貴紀)

◇ ◇ ◇

 4月29日。電話口で鈴木は声を弾ませた。「一歩一歩かみしめました。やっぱり走るのはいいなあと感じました。だいぶ前進できた」。3カ月ぶりに走った感触をうれしそうに語り、会わずとも笑みを浮かべる表情が目に浮かんだ。焦る気持ちを抑え、バイクやウオーキング、体幹トレーニングをこつこつとこなしてきた。結果的に東京五輪は1年延期となったが、母国開催の大舞台が刻一刻と迫る中で走れないもどかしさは並大抵のものではなかっただろう。「かなり不安は募ったし、大丈夫かなと思った」

 愛知県豊橋市出身の鈴木は、中学時代から「天才少女」と呼ばれて注目を集めた。地元の陸上クラブで走りながら豊城中ではバスケットボール部に所属し、「バスケットの方が好きだった」。二足のわらじを履き、2年生で全日本中学選手権の800メートル、1500メートルの2冠を達成。3年生の時は800メートルで転倒して優勝を逃したものの、1500メートルでは連覇を遂げた。

 ところが、陸上に専念した時習館高でけがとの闘いが始まった。高校1年の年に右足甲を疲労骨折し、2年生の時も同じ部位を再び疲労骨折。2度の手術を経験し、ほとんど走れない苦難の高校生活を送った。「苦しかったし、どん底という時もあった。2回目は本当に心も折れかけた。また手術してまたリハビリして、ちょっと気の遠くなるような作業だなと…」

 絶望の淵から救い出してくれたのは、家族や指導者だった。「周りに手をさしのべてくれる人がたくさんいた。どん底の中でも光を見いだしてやってこられた」。夏目輝久(なつめ・てるひさ)さんもその一人だ。高校2年の9月から鈴木のサポートを始め、真っ先に掲げたテーマは「走らないことが練習」。将来を考えたトレーニング計画を立ててじっくりと故障を治した。「夏目先生は太陽みたいな人。その明かりを頼りにやっていた」(鈴木)。高校最後のシーズンでは全国高校総体3000メートルで8位に入ることができた。

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May 12, 2020 at 06:32AM
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