世界6大マラソン(Abbott World Marathon Majors=WMM )の一つ、東京マラソン(3月1日開催)は、新型コロナウイルスの影響で一般参加者の出場を取りやめることになった。2月17日の朝日新聞朝刊がその可能性を特報し、同日夜には主催者の東京マラソン財団が決定を発表した。
「マラソンはマネジメントのスポーツである」とこの連載でも何度か書いたことがある。大会当日に向けてコンディションのピークをもってくるよう練習を重ねたランナーの多くは、ガッカリというより力が抜ける思いだっただろう。
かくいう私も、二次抽選に当たって参加が決まっていた。4年ぶり、しかも東京駅がフィニッシュの新コースは初めてなので非常に残念だったが、この決定はやむを得なかったと思う。
主催者にとっても苦渋の決断だっただろう。だが、キャンセルになった参加予定者には来年の出場権が与えられるというから、いまから1年かけてじっくり調整もできる。そしてなにより、東京オリンピックのマラソン男子代表の3枠目を争うレースをリアルタイムに観戦できる。まあ、それも悪くないかと自分には言い聞かせた。
ところが、である。主催の東京マラソン財団が参加料(国内1万6200円、海外1万8200円)を返金しないと発表したことで、非難の声が湧き上がった。
一般ランナーだけでなく、例えば立憲民主党の蓮舫副代表がツイッターで〈返すべきです。(中略)新型肺炎対策での中止は規約にある一般的な中止とは違うとの解釈で返金を〉と発信するなど、識者の間にも疑問を呈する声がけっこう見られた。
返すべきです。
ランナーにとっては一度は走りたい東京マラソンだからこそ倍率も10倍を超す人気大会。
新型肺炎対策での中止は規約にある一般的な中止とは違うとの解釈で返金を。小池知事「確認したい」参加料返金なしに救済策検討 #SmartNews https://t.co/19ft2afoVo
— 蓮舫・立憲民主党(りっけん) (@renho_sha) February 18, 2020
正直言って、驚いた。マラソン歴10年のオッさんランナーからすれば「う〜ん、気持ちはわかるけど、これは仕方ないんだよぉ」と言いたくなる。
なぜなら、大会中止で参加料が返らないのは東京マラソンに限らず“常識”だからだ。たいてい、それはエントリー時の規約にも書いてある。
実際、記憶にあるだけでも2017年10月の横浜マラソン、18年10月の札幌マラソンはいずれも台風のために中止になったが、参加料は規約通りに返らなかった。19年も台風が猛威をふるい、各地でマラソン大会が中止になった。すべて確認したわけではないが、参加料はほとんど返っていないはずだ。
例えば、知り合いが多数エントリーしていた足立フレンドリーマラソン(ハーフ)は12月開催予定だったが、10月の台風19号による荒川河川敷冠水から復旧ができず中止になった。
参加料は返金されなかったが、参加予定者には「参加賞、プログラム、ナンバーカード、クオカード(おわびの品)」が発送された。さらに余剰金が出たので、被害の大きかった長野県、千葉県、地元荒川の河川敷グラウンド復旧支援に寄付された。中止後の対応は大会によってさまざまだ。
ランナーの参加料だけでは運営費を賄えず
東京マラソンのように約3万8000人規模の日本を代表するビッグレースになると、周辺イベントを除いた運営費だけでも総額約19億7000万円(18年大会実績)かかる。ランナー1人当たりに換算すると約5万4800円(18年の参加料は国内1万800円)だ。内訳は、
○競技・大会運営費 1万6970円
ナンバーカード、計時チップ、医療品購入、手荷物運搬、道路占用・使用許可申請など
○設営関係費 1万3820円
運営・更衣テント、交通規制資材など
○警備・安全対策費 1万3360円
沿道警備員確保、監視カメラ設置、警備資材レンタルなど
○広報費 6860円
交通規制広報・チラシ、大会プログラムなど
○エントリー関連経費 3790円
エントリーシステム運用、参加案内など
つまり、ランナーの参加料だけでは圧倒的に足りないのだ。
さらに、開催に向けて1年かがりで準備をするため、その間の人件費、業務委託費などもかかってくる。エキスポなど関連イベントを含んだ20年大会の事業総予算は約43億4000万円で、収益はランナーの参加料が約6億7000万円、企業協賛金が約26億5000万円、残りは物品販売、権利金などで賄われることになっている。
しかも、今回は一般参加が中止になってもオリンピック代表選考を兼ねたエリートランナーによるレースは行われる。海外などからの選手招聘(しょうへい)費用だけで約2億円、フルバージョンではないにせよ、コース設営や沿道警備、安全対策などのコストもしっかりかかる。
また、開催まで2週間を切っていたので、パンフレットやメダルなども製作済み、警備員の手配や施工物なども当然、発注済みだった。
一般参加の中止が決まって、財団はできるだけ経費を削減できるよう取引先と交渉を続けているというが、契約に従えばキャンセル料の請求も避けられないという。
こうした事情を鑑みれば、単純に「カネ返せ!」とは言えないことがご理解いただけるのではないか。いずれにせよ、今大会を目標に頑張ってきた人、とりわけ今大会でWMM制覇が完成する予定だった人にはお気の毒だが、こうなった以上、この状況を目いっぱい楽しむしかない。
考えてみれば、エリートランナーでもない限り1年も前から次の東京マラソンの出場が約束されているという状況はあり得ない。単純にうれしい。
参加料は、来年も1万6200円だとすると、今年の分と合わせて計3万2400円かかる。2月19日付の東京新聞のコラムは〈これをマラソンの四二・一九五キロで割れば一キロ当たり七百六十八円。百メートルごとに七十七円をチャリンチャリンと投げながら走ることに……〉などと書いたが、それでも私は絶対にエントリーするつもりだ。同じ気持ちのランナーが、私は8割以上はいると思う(いや、もっとかも?)。
ちなみに、ニューヨークシティマラソンの参加料は358米ドル、シカゴマラソンは230米ドルと、海外のメジャーマラソンと比べると、もともと東京マラソンはかなり格安なのだ。
なお、今年走れなくなった参加予定者には「ナンバーカード、計時チップ、ランナーローブ、アルミシート、大会公式プログラム」が送られてくる。
それだけではない。21年大会に参加して完走すれば、なんと20年大会の完走記念メダルとともに二つのメダルがもらえるという。フルマラソン1回で2個のメダルという経験は一生のうちに二度とないだろう(笑)。
そんなわけで、3月1日は大迫傑選手(ナイキ)、設楽悠太選手(Honda)、井上大仁選手(MHPS)らの日本記録更新を期待しつつ、一観客として東京マラソンを楽しむつもりだ。
(トップ写真:2019年の東京マラソン。都庁前を一斉にスタートするランナーたち=2019年3月3日午前9時10分、東京都新宿区、代表撮影)
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